2012年12月21日金曜日

開催報告 11/23 奈良医大 "Thinking Like a Primary Care Physician" Workshop


スタッフの中山です。
このWSの準備をしてくれた奈良県立医大6年の穂積拓考君がWSの報告をしてくれました。

今回は米国のGordon Greene先生をお呼びしての贅沢な勉強会となりました!!
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この度、米国University of Wisconsin School of Medicine and Public HealthからGordon Greene先生を奈良県立医科大学にお招きして、日本プライマリ・ケア連合学会 若手医師部会 ジェネラリスト80大学行脚プロジェクトと共催で、“Thinking Like a Primary Care Physician” Workshopを開催させて頂きました。まずは開催にあたり、講師としてご協力下さった玉井友里子先生, 寺岡英美先生, 中山明子先生に心から感謝を申し上げます。
【概要】
●日時: 11/23(金) 10:00~16:00 (9:30~ 受付)
●場所: 奈良県立医科大学 臨床研修センター
●講師:
Clinical Professor of Family Medicine at the University of Wisconsin School of Medicine
and Public Health Gordon Greene先生
尼崎医療生協病院 玉井 友里子先生
弓削ファミリークリニック 寺岡 英美先生
大阪家庭医療センター 中山 明子先生
●主催: 奈良県立医科大学勉強会サークル(Team Naraidai)
●共催:
奈良県立医科大学総合医療学講座
日本プライマリ・ケア連合学会 若手医師部会 ジェネラリスト80大学行脚プロジェクト
【参加者】

医学生 15人
初期研修医 1人
後期研修医 1人
その他医師 2人

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【企画にあたって】
今年の夏にWisconsinで初めてGreene先生にお会いし、その医学教育への造詣の深さに感銘を受けたのがきっかけでした。帰国後に偶然中山先生にお会いし、Greene先生をお招きしてワークショップを開催したいというお話をさせて頂き、お手伝い頂けることになりました。大学の学生に、ロールプレイやシナリオを通して、少しでもリアルに病気だけではなく、患者さんを診ることを体験してもらいたいと思って企画させて頂きました。
【スケジュール】
10:00-10:15 Dr. Greene’s introduction(1. What is Primary Care, 2. Family Medicine in
Wisconsin)
10:15-10:30 Group introduction
10:30-11:15 Role playing(疾患だけではないアプローチを体験する)
11:15-11:30 Illness & Disease(病いと疾患)
11:30-12:30 Lunch & Talk
12:30-14:00 Clinical reasoning(臨床推論)
14:00-16:00 Clinical ethics(臨床倫理)
【当日の模様】
当日は関西の学生を中心に19名の方が集まってくれました。Introductionはそこそこに、いきなり患者役と医師役に分かれてロールプレイ開始。患者役が細かい内容についてはアドリブで対応するため、本当の患者との面接さながらのロールプレイが行われていました。患者の心の奥底にまで迫れた学生もいれば、そこまでの信頼関係を短時間で築くこと
ができず、なかなか情報を聞き出せなかったという学生も。
ロールプレイの振り返りは、患者役から見て良かったこと、医師役から見て難しかったこと、シナリオの鍵となる部分に関して、先生方とディスカッションを行いました。時間が短くて患者背景の把握だけで終わってしまった、疾患を狙いにいったが有用な所見を聞き出せなかったという意見が多く出ていました。
その内容を踏まえて、中山先生が「Illness & Disease」のミニレクチャーをして下さいました。家庭医として、病気だけを診るのではなく、病気に侵されている患者背景や病気の受け止め方なども含めて、網羅的に病として診ることの大切さ、患者さんの言葉の裏に隠れた本心を聞き出すための「かきかえ」というテクニックに関するお話でした。ロール
プレイで腑に落ちなかったモヤモヤがすっと解消された気がしました。



お昼は立食形式とし、先生方と自由に話をして頂きました。家庭医について、留学について、それぞれの興味をもとにフリートークを楽しんでもらえたと思います。
午後は臨床推論についてのセッションからスタートしました。お馴染みの臨床推論と思っていたのですが、、、これまた何だかはっきりしない主訴で、一見すると不定愁訴?みたいに思えるシナリオでした。しかしじっくり話を進めていくと、とんでもなくややこしい関係が背景に見えてきて、、、疾患を当てるのではなく、背景に複雑に絡み合った糸をひと
つひとつ解きほぐしていくような、そんなセッションでした。よくわからない主訴の中に隠れた重篤な疾患を見逃さないだけでなく、その根本となる原因を患者背景にまでさかのぼって、検討していく思考過程は初めての経験でした。
さて、最後のセッションはどうしましょうか?長時間英語を聞き続けて疲れたでしょう?もう一度ロールプレイで主体的にやってみますか?という先生方のお気遣いとは裏腹に、参加者の学習意欲は留まることを知りませんでした。臨床倫理って何?難しいらしいけど、めったに聞けへん内容ならやろう!と大多数の希望があったので、ちょっと上級編の臨床
倫理のセッションを行なって頂きました。
シナリオは胆嚢癌疑いのおじいさん。肝機能にも障害が出ていて、決して楽観視できる状況ではありません。家族との旅行を楽しみにしているらしく、どのように告知しようかというテーマでした。正解や間違いという概念はたぶんない、けど、おじいさんや家族が旅行をどのように捉えるか、どのようにその時間を過ごすかにかなり影響を及ぼす告知になると予想される状況です。
本人に伝えるべきか、どのように伝えるか、、、国家試験では本人に対する告知が唯一無二の正解ですが、現実はいろんな方法が考えられる。答えが出ないからこそ、充実したディスカッションを行うことができました。
これで勉強会のスケジュールは全て終了。終了後に先生を囲んで、懇親会で楽しくお話させて頂きました。
【まとめ】
日頃は答えが用意されている問題を扱うことが多いので、答えのない問題について議論していくこのワークショップはとても新鮮なものでした。研修医になれば、このような状況に幾度となく遭遇するでしょう。その意味ではよりリアルな臨床の思考過程を体験できたのではないかと思います。Greene先生をお招きしたからこそ、達成できた目標でした。海外から先生をお招きしての勉強会は自分にとって、とてもハードルの高いものでしたが、たくさんの先生方のお力添えのおかげで無事に終えることができました。本当にありがとうございました。

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