2012年3月28日水曜日

開催報告 滋賀医科大学家庭医療学習会 第8弾「ワクチンスケジューリング」


プロジェクトスタッフの菅家です。
今回は、以前より継続して行われている、滋賀医科大学での家庭医療学習会の報告をいただきました!

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京都家庭医療学センターのシニアレジデントの中村琢弥です。
2012228日に滋賀医科大学にて「ワクチンスケジューリング」についての定期学習会をおこないましたため、
その報告を行います。

 本学習会は私の母校である滋賀医科大学の家庭医療勉強サークルであるFPIG関西や国際医療保険学習サークルであるTuktukの皆様と協力し、20114月より毎月一回連続開催している家庭医療学習会の第8弾になります。
 今回はこれまで手をつけていなかった小児科領域!かつ、大学ではあまり学ぶことが少ない「ワクチンスケジューリング」をテーマとして取り扱うこととなりました。昨今、ワクチンは定期接種の種類も増え、ますます一般市民にとっては混乱の様相を呈している状態です。今こそ家庭医として将来医療者となられる学生の皆さんにワクチンを正しく取り扱えるように学習の場を持ちたいと思ったのでした。

 実は今回の学習会の構想はかなり以前からありました。標準ワクチンスケジュールを組むセッションを軸にワクチンごとの特徴やそのスケジュールを組むことそのものの難しさ、そして現実にはその難しさに一般市民である両親がさらされていることを学生の皆さんに実感してもらうことが目的の一つとしました。そんな両親に対して、正しくワクチンスケジュールを指導できる医療者となろうとすることはおのずと生まれる感情だと思ったからです。

 WS前の事前準備では、日本小児科学会が先日発表した推奨ワクチンスケジュールを軸に資料をラミネート化して作成し、またVPD(Vaccine Preventable Diseases)の詳細を家に帰ってからでも学ぶことができるように専用の資料を別途作成しました。また実際にスケジューリングに取り組んでもらうためのシートを用意し、本番に臨みました。

 さて、当日は19:30から開始、参加者である学生は合計12となりました。セッションではIce breakingと同時にFirst sessionとして「貴方の知っているワクチンは?」と題して、グループ毎にできるだけたくさんのワクチン名を挙げてもらいました。こうしたSGDを用いたグループワークは一種のゲーム感覚も作用して、非常に盛り上がるとともに、学生同士でも刺激し合うため、この程度の人数での学びの感覚を研ぎ澄ませるには向いていると考えています。


 その後、ワクチンについてのおおよその説明をおこないました。特に「定期接種」と「任意接種」、「生」と「不活化」、「同時接種について」、「接種方法(皮下注、筋注など)」、これらについては特にきちんと時間をとって正しい知識を持ち帰っていただきました。そして、メインセッションとして「貴方の前に満1ヶ月のお子さんを抱えたお母さんが現れました!」というシナリオでの標準ワクチンスケジューリングを体験していただきました。提示した条件は以下のシナリオです。このシナリオ設定も様々に悩んだ末決定しました。
 
・対象となる小児は基本的に元気である(病気をしてワクチン接種不能とはならない)。
 ・この地域ではポリオは生ワクチンであり、不活化の希望は今のところない(ここは悩みましたが今回は本設定)。
 ・生ポリオワクチンのみ集団接種。この日は他の同時接種は基本的に不可能とする。
 ・本家族は経済的には大きな問題なく、意向として「打つべきワクチンは全て打ちたい」と考えている。
 ・両親は同時接種に抵抗がない。
 ・日本小児科学会が推奨するスケジュールを参照とする。

 全体として学生達皆が顔をつきあわせて、ワクチンスケジュールに一生懸命取り組んでいただけました。その議論の中で様々な壁にぶち当たり、悩み、ワクチンごとの性質をファシリテーターとなっていただいた医師を交えて議論してもらえたのではないかと思います。最終的には各グループからそれぞれ工夫されたスケジュールが発表され、盛況のうちに本会は終了となりました。

 Next stepとしてはワクチンスケジュール毎の評価を行う時間をとることができなかったことです。その代わり今回は全体のタイムマネージメントを厳密に行い無理のないスケジュールを組むことができたと自負しております。WS構成もこの一年で洗練されたものです。

 報告は以上です。今後もこの会は月一回で継続予定(次回は20124or5月開催予定)です。
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2012年3月24日土曜日

開催報告 徳島大学 家庭医療ワークショップ


プロジェクトスタッフの菅家です。

今回は、京都家庭医療学センターの太田先生より、
徳島大学での家庭医療ワークショップの報告をいただきました!

今回は、太田先生、そして國永先生が徳島大学出身とのことでしたが、

当プロジェクトでは、出身大学、出身県など縁のある先生方に、
ぜひ関わっていただきたいと考えています。

今後も、各地で勉強会を開催しますので、皆様ぜひご協力ください!

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私の母校である徳島大学で、家庭医療ワークショップを開催いたしましたので報告いたします。

日時:2012317日 1300~1800
場所:徳島大学講義室
参加人数:学生6(21名、42名、63)、講師5
松坂英樹、岡田奈保子(岡山家庭医療センター)
蓮間英希(家庭医後期研修プログラム「なごみ」)
太田敦(京都家庭医療学センター)
國永直樹(倉敷中央病院救急センター)
   オブザーバー:徳島大学大学院総合診療医学分野 河南真吾先生

当日のスケジュール:
13:00-13:20 イントロ(松坂)
13:30-15:00 WS1(岡田)  
休憩30
15:30-17:00 WS2(太田) 
休憩10
17:10-17:20 まとめ・シメ(太田)  
17:20-17:40 医師の素顔①(蓮間)
17:40-18:30 医師の素顔②(國永)
集合写真+アンケート

ワークショップ内容
①イントロ:松坂先生より「80大学行脚プロジェクト」の紹介、メンバー紹介があり、その後、参加者少数のため自己紹介をしてもらいました。「座右の銘は?」のお題に個人の考えが垣間見られる場面がありました。もともと参加者全員が「地域医療研究会」http://tiiki-iryo.jimdo.com/のサークルメンバーであるため、リラックスムードで開始となりました。
②ワークショップ1 disease & illness
1週間続く心窩部痛主訴に来院した吉野川三郎50歳男性の外来場面でのデモからスタート。Hスマ先生のぶっきらぼうながらも的確な問診により胃炎と診断。その後のグループで、Hスマ先生の外来の良かった点、悪かった点をディスカッション。OSCE直後の4年生からは、OSCEでは完全に再試ですコメントあり。患者への対応については、学生はよく教育されているのを感じました。
続いて、disease 解剖学的アプローチのレクチャーの後、グループワークにて鑑別疾患をピックアップ。2年生もいましたが、数多い鑑別疾患が挙がりました。
その後illnessについてのレクチャーおよび「かきかえ」のロールプレイを行いました。
多少のぎこちなさはありましたが、役になりきっていました。illnessをどのタイミングで聞き出すのかなどの質問がありました。diseaseillnessのバランスよく行う重要性についてコメントがありました。
③ワークショップ2 context
内服薬にて軽快せず1週間後に再診の三郎さんに対し、どのようなことをさらに聞きたいかグループでディスカッション。内服状況、ストレスの有無、職業などが挙がる。その後コンテクストについてレクチャーを行い、医師役、患者役、観察者役に分かれロールプレイを実施。医師役では実際の外来経験がないため、質問が唐突で単発に終わってしまい情報が集めにくいと感じ、患者役では聞かれた質問にどこまで答えるべきか悩む場面もあったようです。話題に相方向のリズムが生まれると深い内容まで自然に情報交換できることも感じていただきました。最期にcontextを探る意義を説明の後、吉野川三郎さんのcontextをスライドで紹介して終了しました。
④まとめ
2つのワークショップのまとめをスライドで実施。家庭医の基本的な考え方である「患者中心の医療」の2つの柱を学習したこと、これらを統合して患者医師関係の強化を行い、共通の理解基盤を築いてゆくことなどを説明しまとめとしました。
⑤医師の素顔として2年目初期研修医の蓮間先生と8年目医師の國永先生に語っていただきました。
蓮間先生の初期研修中のモチベーショングラフは斬新で、笑いと愛に満ちた内容でした。そんな中、受持ち患者が増えることによる精神的、肉体的疲労があること、救急でのヒヤリハット後落ち込んでしまったことなど、研修医の苦悩もさらりと紹介されていました。
國永先生は徳島大学の先輩医師。「徳島を愛するがゆえに徳島を離れ外から眺めてみる必要を感じた」と冒頭から熱いトークでした。「目の前の溺れた人を助けるのが◯◯医の仕事だが、上流で溺れないような工夫をすることも必要」「頻回救急受診の高齢腹痛患者に対して、安易な処方、他科紹介では問題は解決しない。disease & illnesscontextを知る必要がある」など、予防医学、家庭医療にも相当深い理解と情熱が伺われました。患者を救いたいという熱い思いの素晴らしい徳島大学の先輩先生の話で最後は拍手喝采で終了となりました。

参加者アンケート、集合写真後、全員で懇親会会場へ徒歩で向かいました。
ここでも学生からはいろいろな質問が出され、熱いトークが遅くまで繰り広げられました。

2012年3月9日金曜日

3/12 藤田保健衛生大学 「家庭医療と震災医療」講演会

プロジェクトスタッフの菅家です。

先日紹介した動画は反響が大きく、私自身も嬉しい限りです。
当プロジェクトの思いが伝われば、と考えています。
(←左のリンク プロジェクト紹介(YouTube) から見れます)

さて、今日は、広島大学の横林先生より、
藤田保健衛生大学での講演会のお知らせをいただきました!

横林先生は日本プライマリ・ケア連合学会(旧:日本家庭医療学会)認定の
家庭医療専門医 第1期生です!
今回は、家庭医療についてと震災支援にあたった経験をお話されるとのこと。

私も何度も講演・ワークショップ等ご一緒させていただいてますが、
楽しく、かつ学びの多いお話を提供されています。
これは必見です。お近くの方、ぜひご参加ください!

↓クリックするとグーグルドキュメントに飛び、大きいものが見れます

2012年3月6日火曜日

改めて、行脚プロジェクトの紹介、インタビュー動画紹介

当プロジェクトリーダーの菅家智史です。
ジェネラリスト80大学行脚プロジェクトは設立1周年を迎えました。
皆さんのご支援のおかげです。ありがとうございます。

ということで、1周年を迎えた所で、当プロジェクトの趣旨を改めて紹介します。

まだまだ、医師・学生のなかでも知名度が高いとはいえないジェネラリスト。
興味はあるけど、「大学外で行われる勉強会に行くほどじゃないし」という学生に向け、
大学構内へおじゃましての勉強会を、学生と一緒に企画させてもらい、
少しずつでも裾野を広げていきたい! 魅力ややりがいを伝えていきたい!
という思いからスタートしたプロジェクトです。


そんな私の想いが込められた、地域医療・家庭医療、
そして行脚プロジェクトについてのインタビューがあります。

ぜひ一度ご覧下さい!

http://youtu.be/SNelaEYzf_o (11分弱)

このブログで紹介しているような勉強会を、全国80大学医学部で
どんどん行なっていきたいと考えています。
ぜひ、自分の大学でもやってほしい、という学生さん、大学関係者の方、
どうぞご連絡下さい!

定まった形はありませんので、どのように協力させていただくかは
状況に応じて相談しながら、一緒に考えさせて頂きます。

今後も、当プロジェクトをどんどん進めていきたいと思いますので、
よろしくお願いします!

2012年3月1日木曜日

開催報告 愛媛大学 家庭医療ワークショップ


プロジェクトスタッフの菅家です。

今回は愛媛大学のワークショップ報告をいただきましたので紹介します!


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「家庭医療ワークショップ in 愛媛大学」開催報告
愛媛大学医学部5年 小林みどり

日時:2012年2月18日(土)13:00〜18:00
会場:愛媛大学医学部 地域医療支援センター3階 トレーニングステーション
企画代表者:小林みどり(愛媛大学医学部5年)

講師:
谷本浩二先生(新居浜協立病院)
原穂高先生(愛媛生協病院)
御前秀和先生(新居浜協立病院)
山本美奈子先生(愛媛生協病院後期研修医)
松坂英樹先生(岡山家庭医療センター)
岡田奈保子先生(岡山家庭医療センター後期研修医)
中山元先生(岡山家庭医療センター後期研修医)

参加者:10名

タイムテーブル: 13:00~13:30 イントロ、アイスブレイク

松坂先生によるイントロと参加者全員の自己紹介を行いました。
各々、座右の銘を発表しながらの自己紹介は様々な名言が飛び交い、それだけでも十分感銘を受けるようなアイスブレイクとなりました。

13:30~15:00 「家庭医らしい小児の診療」

岡山家庭医療センターの中山先生によるワークショップでした。
まず、家庭医に期待する小児診療、小児科医に期待する小児診療、などについてグループディスカッションを行いました。
次に鼻汁と咳を主訴とした太郎くんのシナリオをもとにグループディスカッションをし、シナリオを進めていきました。
子どもの来院から家族へ広げていく視点はまさに家庭医ならではだと感じました。
大学病院の実習ではなかなか教わらない診察の視点を学びました。

15:20~16:50 「GPはここまでできる、眼の疾患」

新居浜協立病院の谷本先生によるワークショップでした。
「目」の出てくる慣用句をあげるという新鮮な導入から始まり、眼科専門医へコンサルトする眼疾患についてレクチャーを受けたあと、耳鏡や眼底鏡などを使って実際に眼を診ていきました。
OSCEでは形だけになってしまいがちな眼の診察が「できた」という経験は、WSのみではなく機会を狙って実践してみたいという臨床現場へのモチベーションを高くしてくれるものであり、有意義な機会を得ることができました。

17:10~18:00 まとめ

愛媛生協病院の原先生が「家庭医推し」のお話を、山本先生が「私は家庭医?」と
いうことでご自身の家庭医観をお話してくださいました。
原先生は、家庭医について専門医との対比などを交えてわかりやすくお話してくださいました。
山本先生はご自身の半生を織り交ぜながら、実際に家庭医として働き感じたことや家庭医の魅力を教えてくださいました。
先生方のお話を聞くことで、地域との関わりや家族との関わりを持つ家庭医マインドは家庭医のみならず、様々な形で医療に携わる上で大切なものだと感じました。

最後に夏期セミナーの紹介をさせていただき、ワークショップは終了しました。
今回だけでなく、今後につながるワークショップでありたいと思います!